歴史

江戸時代中期頃までは、お茶と言えば「番茶」というのが一般的でした。「番傘」「御番菜」という言葉に「番」が使われるように、「番」という言葉には「日常的な」という意味があったのです。しかし、町人文化が徐々に発展していくと、「煎茶」が一般的に出回るお茶となり、「番茶」は番茶という茶の種類の一種として認識されるようになりました。各地域独自の製法で番茶を作っていたため、番茶は番茶でも「京番茶」(京都)や「日干番茶」(奈良)など、地域によって呼び方が変わるのです。

さっぱりとした味わい

独特な風味を持つことで知られていますが、昔の日常的なお茶であったこともあり、すっきりと飲みやすい味わいであることが特徴的です。また、焙煎の有無は地域によって異なりますが、いずれにしても口当たりはすっきりとしており、焙煎した番茶は香ばしさも程よく感じられます。すっきりとした飲みやすい味わいであることから、一服で飲むような他のお茶とは異なり、家庭でごくごくと飲むようなお茶として取り入れられていました。

製法

大きな茶葉から作る家庭の茶

煎茶や玉露等では新芽を使用していましたが、番茶では成熟して硬くなった茶葉や枝を使用します。硬くなった茶葉や枝をそのまま蒸し上げ、天日干しで乾燥させます。その後、そのままでお茶にする地域もあれば、焙煎する地域もあります。宇治田原町で親しまれている「京番茶」は少し焙煎したもので、スモーキーさが感じられるのが特徴です。番茶は地域によって製法が異なりますが、いずれの製法においても、すっきりとした仕上がりになるのが特徴です。

淹れ方

「番茶」の製法には揉む工程がなく、お湯を注いだ際お茶の成分が浸出しにくいです。そのため、揉む工程のある「煎茶」等と比べて、高い温度で淹れることでお茶の成分を引き出します。また、昔日常的なお茶として取り入れられていたということもあり、やかんで煮出して頂くのが一般的です。すっきりとした飲みやすいお茶をお楽しみください。

一.やかんでお湯を沸かす

やかんで2ℓのお湯を沸かします。京番茶は、しっかりと味と薫香を出すために、急須で淹れるのではなく、やかんで煮出すことが大切です。

二.沸騰したお湯に茶葉を入れる

やかんのお湯が沸騰したら、京番茶を約20∼30g入れます。京番茶は揉む工程がなく、そのままの茶葉を使用しており、成分が浸出されにくいです。そのため、心持ち多めの茶葉を入れることがおすすめです。

三.2~3分煮出す

茶葉を入れて、2~3分煮出したら完成です。紅茶のような綺麗な赤茶色になれば飲み頃です。スモーキーな香りを感じつつ、さっぱりとした味わいを楽しむことができます。冬は温かくまったりと、夏は冷たくさっぱりと飲んでみてはいかがでしょうか。