1738年(江戸時代中頃)、永谷宗円が考案した製茶方法によって生まれたのが「煎茶」です。煎茶が生まれる以前、人々は赤茶っぽく、風味の良くない「煎じ茶」というお茶を飲んでいました。そこで、抹茶の製法を模倣して「煎茶」に生まれ変わらせたのが永谷宗円なのです。元々の製法では、茶葉を蒸してからそのまま乾燥させていましたが、永谷宗円はそこに「揉む」という工程を加えました。そして、香りも味も優れた、鮮やかな黄緑色の「煎茶」が誕生したのです。永谷宗円が編み出したこの製法は、「青製煎茶製法」と呼ばれています。
歴史
永谷宗円が生み出した「煎茶」
特徴
爽やかな香りとすっきりとした渋み
煎茶は爽やかな香りと程よい渋みが特徴で、上級品になるほど旨味が強くなり濃厚な口当たりになります。淡い黄緑色で、爽やかな香り、程よい渋み、甘味、苦みがバランスよく感じることができます。日本緑茶の中で、もっともよく飲まれている代表的なお茶です。淹れ方や一煎目、二煎目などで渋みや甘味、そして苦みの強さの変化も感じられ、様々な味わいを楽しむことができます。
製法
「蒸し」と「揉み」が重要な煎茶製法
摘採した茶葉が新鮮なうちに、蒸気によって加熱します。蒸し終えた茶葉は十分に冷まし、それ以上冷めないよう熱風を当て温度を調節しながら打ちほぐしていきます。その後、茶葉に含まれる水分を均一にするため、茶葉を回転させながら圧を加えて揉みほぐしていきます。その後、また熱風を当て揉みながら乾かしていきます。葉を握って離すと自然に固まりがほどける程度まで乾燥させ取り出します。最後に、「こくり」と呼ばれる凹凸のある板の上で茶葉を強く揉み、茶葉を細長く撚れ、艶やかな茶葉に仕上げていきます。そして、十分に乾燥させれば「煎茶」が出来上がります。
淹れ方
一煎目も二煎目も美味しく
爽やかな香りと、程よい渋み、甘味、苦みがあるのが煎茶の特徴です。お湯の温度は上級茶で70度、中級煎茶で80∼90度が適温とされています。二煎目も美味しく淹れるためには、一煎目を注いだ後の急須の中にお湯を残さないことが大切です。
一.茶葉を急須に入れる
茶葉の量は一人当たり約2~3g、茶さじ大盛1杯分が目安です。
二.沸騰したお湯を湯冷ましに注ぐ
沸騰したお湯を湯冷ましに注ぎ、およそ70度(手に持っていられる程度)まで冷まします。お湯の量は茶葉1gに対して30㎖が目安です。煎茶は低温で淹れることでカテキンの抽出が抑えられ、程よい渋みでまろやかな味を楽しむことができます。
三.湯呑にお湯を注ぐ
湯冷ましに注いだお湯を、湯呑に注いでいきます。そうすることで、お湯の計量をしつつ湯呑を温めることができます。
四.湯呑のお湯を急須に回し入れる
湯呑のお湯を茶葉全体に染み渡るように回し入れていきます。そして、急須をゆすらず、茶葉が開くまで1分半∼2分待ちます。撚れた茶葉がふんわりほどけてきたら、飲み頃です。待っている間に急須をゆすると、濁りや雑味が出てしまうのでゆすらず待つことが大切です。
五.急須に蓋をし、交互に湯呑に注ぐ
一つの湯呑に一気に注ぐのではなく、交互に少量ずつ入れていきます。こうすることで、すべての湯呑に均等な濃さと量のお茶を入れることができます。
六.最後の一滴まで注ぎ入れます
最後の一滴まで絞り切って淹れるのが、大切です。そうすることで、一煎目に凝縮された茶葉の旨味を楽しめるのはもちろん、茶の成分の浸出を抑えられるので、二煎目以降も風味豊かなお茶を味わうことができます。